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作動機構と伝達機構

ストップウォッチを作動させる機構と針へと
動力を伝達する機構によって以下の方式に
大別されます。

■作動機構

作動機構はストップウォッチの作動/停止を司る。
ボタンを押すとそれに連動してレバーが動作し、
作動機構を動かし、さらに伝達機構へとつながる
各種のレバーを動作させる。いわゆる、ボタンと
内部機構との仲立ちを行うための装置です。以下
2つに大別されています。

ピラーホイール方式

形状は柱(ピラー pillar)が歯車状に立てられています。
ボタンが押されると、それと連動したレバーの爪が、
この歯車を1歯分だけ送ります。これにより内部機構側
のレバーの先が、歯車の凸部に押し上げられたり、
凹部に落ちたりすることで、各レバー全体も動作。

後述の伝達機構が動き、ストップウォッチが作動/停止
します。動作が滑らかで耐久性も高く、どちらかと
言えば高級機種に採用されることが多いです。
柱にあたる部分の形状の調整が難しいとされ、
製造や修理の難易度も高いとされます。
コラムホイール方式とも呼ばれます。
カム方式
作動の原理は大きく変わるわけではありませんが、
ボタン→レバーの先にあるのは、板状のカムです。
カムの形状は様々だが、その形状と回転運動に
応じて内部機構側のレバーが作動し、
伝達機構を動作させます。

カムは金属板からの打ち抜きで原型が製造可能であり、
形状の微調整も比較的容易であることから
ピラーホイール方式と比べて廉価かつ
製造難易度も低く、整備性にも優れます。
ただし動作の円滑や耐久性の面では
ピラーホイール方式に劣るとされています。

■伝達機構

「クラッチ(clutch 掴むもの)」とも呼ばれます。
作動機構から伝わるレバーの動作に応じて、
時計の輪列機構で秒針を回す役割を負う4番車と、
ムーブメント中央にあるクロノグラフホイール
(クロノグラフ車)へを繋ぐ/切断する役割を負います。
主要な方式は以下の3方式があります。

キャリングアーム方式
もっとも古典的な伝達機構。稼動する
レバー=キャリングアームの一方の先端に、4番車と
常時接続している中間車があります。作動機構の動作
に応じてこのキャリングアームが移動し、中間車が4番車
だけでなくクロノグラフホイールにも接続し、回転動力が
伝達されます。

古典的なだけに製造難易度は割合に
低く整備性にも優れます。ただし、常時回転する歯車を
停止している歯車に「ぶつける」ような機構であるため
針飛びが起り易いです。また歯車同士の摩擦も
大きいため力損失や部品の摩耗も比較的大きいです。
スイングピニオン方式
キャリングアーム方式の中間車に当たる部分に
上下二段のピニオン(小歯車)を採用した方式。
文字盤側の小歯車が4番車に常時接続しています。

作動機構の動作がレバーを解して伝達されると軸が
わずかに移動して、裏ブタ側の小歯車がクロノグラフ
ホイールに接続し回転が伝わります。小型の歯車を
介して回転を伝達する分、摩擦による力損失が発生
しにくいとされます。

現在のところ最も普及しているクロノグラフムーブメント
であるエタ製キャリバー7750(後述)とその派生機が
採用されています。
垂直クラッチ方式(同軸)
自動車のクラッチに最も近い方式。上の2方式とは
対照的に垂直方向に動力が伝わる。4番車は
ムーブメント中央の中間車に常時接続しています。

この中間車の文字盤側に摩擦車(歯車ではなく円盤)
が同軸に配され、連動して常時回転します。さらに
文字盤側にクロノグラフホイール(これも円盤)が
位置しています。

作動機構から動作が伝わると、摩擦車の左右を挟み
込むように配されたレバーが摩擦車を押し上げて
クロノグラフホイールに密着し、動作が伝達されます。

最終的な動力の伝達が歯車で行われないため、
原理的に針飛び・摩擦による力損失・部品摩耗が
発生せず、作動も円滑です。PAUL VUILLE PERRETの
特許(1885年取得 US315829)やG.SANDOZ-LEHMANN
の特許(1889年取得 CH783)など、懐中時計用
クロノグラフが普及しだした初期の時代から見られる
動力接続方式。

腕時計クロノグラフ用としては1935年に
Leon Levy freres (Pierce)が開発(1938年特許取得
CH195382)。1969年にセイコー(現セイコーホール
ディングス)も開発したが、クォーツ時計の台頭に伴い
広く普及しないままに終わりました。しかし2000年に
ロレックスがデイトナをモデルチェンジした際に搭載した
自社キャリバーに採用した。後に、
セイコーもこの機構を復活させました。
垂直クラッチ方式(別軸)
垂直方向に動力接続を行うのは上の同軸の方式と同じ。
摩擦車に相当する歯車とクロノグラフホイールが別軸で
あるところが異なります。H.A.Lugrin(Lemaniaの創業者)
の特許(1876年取得 US182836)など、懐中時計
クロノグラフが普及しだした初期の時代に見られる
動力接続方式。Lugrinの特許を使ったWalthamやLongines
の物が有名。